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アニマガ情報ドットコム

アニメや漫画に興味がある人のための、情報共有ブログです。

ワシントン・ポストによる的外れな日本批判―東村アキコ『ヒモザイル』炎上は性別分業のせいか?―

小ネタ

東村アキコさんの新作『ヒモザイル』炎上事件。

ちょっと前にネットを騒がせましたが、アメリカを代表する高級紙ワシントン・ポストThe Washington Postがこの一件について記事を書いています。

しかし、その内容がなんだかおかしい。

そもそもタイトルからして

日本のマンガ家が男性を主夫として描いたために非難される

ですよ。

あれ、ネットニュースで見たのと理由が違うような・・・と思って調べてみました。

毎日新聞のウェブサイトには「家で家事をこなす男性を、女性に金銭を貢がせる「ヒモ」と呼ぶ内容などに、ツイッターなどで批判が寄せられていた。」とあります。

他のニュースサイトを見ても、批判の内容は男を主夫として描いたからではなく主夫をヒモ男のように描いたからというものです。

ワシントン・ポストのタイトルとはぜんぜん違います。

それでは、ワシントン・ポストはどんな記事を書いているのか。

以下、気になる部分を翻訳してみます。

(誤訳および意訳についてはご容赦ください。)

Akiko Higashimura, a well-known Japanese manga artist, has withdrawn her new series after only two installments, because of criticism that the comic was demeaning to men.

What did it do to put men down? It showed a bunch of guys in T-shirts learning how to do things like laundry, cooking and washing dishes

日本の有名マンガ家・東村アキコが、わずか二回で新連載を休止した。マンガが男性を侮辱したというのがその理由である。

男性を侮辱した?マンガが描いているのは、炊事洗濯の仕方を学ぶTシャツ姿の男性たちだ。

 

But here in Japan, where gender roles remain deeply ingrained, many women have trouble maintaining careers after having babies — sometimes because of the demands of child care and sometimes because of a phenomenon called “mata hara,” short for “maternity harassment, at work.

Men are expected to get good stable jobs and work long hours moving slowly up the corporate or bureaucratic ladder.

So Higashimura’s suggestion that men with few skills might want to appeal to women with plenty of them was close to sacrilegious. Nevermind that the series was semi-biographical.

しかし日本においては、性役割がまだ根深く、多くの女性は(育児をしたり、職場でマタハラを受けたりするために)出産後にもキャリアを維持することは困難である。

男性は安定した仕事に就き、長時間会社のために働いて年功序列で出世することが望まれる。

したがって、無能な男性だって有能な女性にアピールしてもいいのだという東村の提案は、冒涜的ですらあったのである。もちろん、この連載は半分実話だったのだが。

 

It seems that in Japan, even as the government promotes “womenomics,” there's no room for women to even dream about a world where men might whip up dinner and pick up their own socks.

政府はウーマノミクスを促しているにもかかわらず、日本の女性には、男性が夕食を作ったり靴下を拾ったりすることを夢想する余地すらないようだ。

 ええええええええええええええええ!

新作マンガが休載したって話から、日本の女性差別に話がすり替わってるやんけ!

何を言ってるのか(ry状態ですよ。

どうもこの記者は、

①日本では、男は仕事で女は家庭という習慣が根深い。

②だからキャリアウーマンの主夫を目指す男の話は、社会的に受け入れなかったのだ

という壮大なる誤解をしているようです。

確かに、まだまだ男尊女卑の傾向は強いし、男は外で女は内という考え方を持っている人も多いですよ。だから①はある意味でまちがっていない。

でも、『ヒモザイル』への批判は②のようなものではないでしょう。

男性アシスタントへの"暴言"や恋人のために炊事選択をこなす男性をヒモと呼ぶことが政治的正しさという点においてどれほどアブナイかは、性別を入れ替えれば簡単にわかるはず。

※自分で想像するのがめんどくさい人はこの人の書いた男女逆転版を読んでみよう。

世のフェミニストリベラリストからしたら大問題作ですよ。

 

ぶっちゃけていえば、『ヒモザイル』というタイトルはかなりキャッチーです。

人生を生き抜くために金持ち女性にザイルをひっかけてヒモとして生きるぞ!

というのは、かなり議論を呼ぶとはいえ、よく考えられたタイトルだと思います。

そして、なんといっても”たかが”マンガでしょ。事実を基にしているとはいえ、マンガである以上は、脚色し大げさに描くことは当たり前。

不快な内容があったとしても、それが東村さんの思想や考えを完全に表しているわけではない。かといってマンガを読んで不快に思ったことは事実なのだから、それをネット上で表明する権利は誰にも奪えない。

①作家は刺激的な作品を描いた。

②読者はおのおのの感想を明らかにした。

③インターネットによってあっという間に感想が拡散した。

④作家は反応に耐えきれず、創作を断念した。

⑤それによって、ちょっとした騒動になった。

いってみればこれだけの話です。

仮に読者のことを顧みない作家や出版社であれば、批判なんて無視して連載をしたでしょう。

その場合、問題にすらならなかったかもしれない。

(東村さんや講談社の判断を非難しているわけではありません)。

 

あらためて強調すると、ワシントン・ポストの記事はまったくといっていいほどデタラメだ。

この休載を日本文化や日本社会と関連づけて記事にするならば、SNSやまとめサイトの登場以降、日本が急速に"炎上社会"になったことに着目するべきであって、いまさら日本のジェンダー観をあげつらったところで意味がない。

お願いだから、”たかが”マンガを日本バッシングの材料に使うのはやめてくれ!